スロー・ラーナー(花火とロケット) in 薄荷/EMDEE1



埼玉のトラックメーカーEMDEE1君からカセットテープが届いた。このご時世にカセットテープである。アナログや不便なものが見直されるというのはとてもいい事だなあとおもう。べつに人間はみんなが能率の良い機械の様になりたい訳じゃない。

話はずれるが、ボーカロイドとオートチューンが同じ場所へ収斂されていくというのは機械やプログラミング言語とのセックスを夢見る社会の先駆けなのだろうか、と妄想する事があってそれはそれで趣味的に面白いなと思う事もある。機械と融け合う事を願う人がいれば、動物の持っていた感覚を取り戻したいと思う人もいて、一人の人間の中でさえそういうのが多次元の将棋盤みたいに自分の心地よいバランスを探している、そういうのがいい。

本当に話がずれまくったがカセットテープでのリリースされたEMDEE1君のアルバムは「薄荷」というタイトルで自分も一曲参加している。スローラーナー(花火とロケット)と言うタイトルである。まだ自分が関東にいるときEMDEE1君と晴れた冬の神保町の喫茶店で打ち合せをした。埼玉のグラフィティライターのシーンや、自分がまだ日本語ラップ界隈にいた頃の、自分の知らなかった昔話などをとても面白くきいた事を覚えている。

絵を書く人が好きだし、絵を書きたかった人の音楽が好きだから話を受けてみようと思った。「スローラーナー」とはトマスピンチョンのSF小説のタイトルで、以前から読もうとしているのにその難解な内容に読み切らずにほったらかしにしている。ある日、古川さん(古川耕)がつくばの家へ、妻のインタビューにきたときもその本がほったらかしにしてあって、後日SFに造詣が深い古川さんはトマスピンチョンの読み方を教えてくれた。なるほど、と思ったまま相変わらずほったらかしのまんまだ。

S-KENさん然り、私より上の世代の人はSFを文字で読むという楽しみや教養があり、そういう所に自分は文学的なあこがれがあるし、そういうにおいのある人の作品はなぜか惹かれる。たとえば吾妻ひでおやとり・みきのマンガだってそうだ。



ああ、とにかくスローラーナーの話で、別にすぐに何かになったり、何かのためになったり意味があったりする必要は少なくとも、とあるバランスをよしとする人たちには必要がなくてまあ、ゆっくりやれば思いもしない形になるんじゃない、という希望のようなあきらめのようなものがないまぜになった歌詞を書いた。slow leanerとはゆっくりおぼえる子の事で確かピンチョンの解説では「のろまな子」と訳されていた気がする。

ところでこのテープアルバム、各客演の音源が素敵なのはもちろん、あけてみるととてもいいものが入っていた。よくこんなもの見つけたなぁと感心したし、届けるということの意味をよく考えている人なのだなぁと改めて再確認した。一緒につくれてよかったなぁって。




話が長くなったがいろいろとおめでとうEMDEE1君。
このテープがどこを飛び回るか楽しみです。

4本届いて「売っていいですよ」と手紙に書いてあったので3本は本当に売ってみる事にする。必要な人は右側の諸連絡先に連絡いただければ。メッセージ確認と発送のタイミングがこちら任せになってしまうけれど、サインや落書きなど書いて封書などに入れて京都よりお送りします。いくらだっけ?税込みの1,080円。

wenodやアマゾンでも手に入ります


EMDEE1君の活躍に付いてはこちらを覗いてみるといいかも。